2013年9月25日水曜日

行き先の放送

車いすで電車や地下鉄、バスに乗ることが、ここ数年でとても楽になりました。
駅にエレベーターが整備され、バスもノンステップバスの割合が多くなり、乗る乗らないで言い合いになることはほとんどありません(私の場合)。
東京に住んでいるせいもあるかも知れません。

数年前文京区に住んでいた頃、ある時最寄り駅の駅員さんが、私の対応をしながら聞いてくれました。
「行き先の放送は、お客さまがして欲しいかして欲しくないか選べることになりました。どうしたいですか」
当時、駅で対応をしていただくときは、ホームで必ず行き先を放送されていました。
「今度の○番線の電車、お客さま乗車中。どこどこまで」
どこどこには行き先の駅名が入ります。

もう少し前は「お客さま乗車中。」ではなく「車いす乗車中」でした。
少しずつ言葉は変化していっています。

話し戻して。
私は、親切に放送するかしないか聞いて下さった駅員さんに、
「しなくていいのならばしないで下さい」
とお願いしました。
その日から、どの駅に行っても,そのことを最初に告げることにしました。

こんな小さなことで、駅によっては強い言い合い(つまりけんか)になったりしました。
駅員さんに教えてもらったのに、駅によって対応が違うのでした。

私がこだわっているだけなのか。自意識過剰なのか。
私の主張は間違っているのか。
違う視点から見たらこのことは妥当なのか。
ずいぶんちまちまと悩みました。

駅名をホーム全体に流すこと。
目的は車掌さんに伝えるため。
行う意味は車いす使用の乗客のあんぜんをはかるため・

本当にホーム全体に放送することが安全なのか。
私の疑問はそこでした。

地下鉄では行き先の放送をするところはなくなっています。
少し前までは数回そのような駅にも遭遇しましたが。

そんなある時。
一人でたまたま乗り継ぎをすることになりました。
地下鉄でした。

一人エレベーターを待っていると、男性が携帯をいじりながら近づいてきて、エレベーターの前に並びました。
なんとなく近寄りたくない雰囲気の方でしたが、逃げようとしても車いすで動くとオーバーリアクションになるため、知らぬふりで一緒にエレベーターに乗りました。

なるべく目をあわせないようにしました。

が、降りる際焦りがでてしまい、先におりようとした男性にすこしかすってしまいました。
「あ、すみません、申し訳ありません。」
私は急いで出来るだけ丁寧にあやまりました。
すると、
「かわいいから、ゆるしてあげる」
男性はそう言って、私の左の襟元をシュッとさわって離れて行きました。

しばらくホームの先で時折その男性が私を見ていました。
私は平静さを保っているふりをして、目があうと丁寧に頭を下げたりしていました。

ストーカーに狙われる、言いしれぬ恐怖というものは,この感覚に似ているかも知れないと思いました。
この状態では誰にも何も話せません。何もされてないから。

私は丹田に気をためて、気合いを入れて、そのホームにいました。
電車に乗ったときには、その男性は見えませんでした。

「行き先は放送しないで下さい」
このお願いは正しかったと、この日、私は確信しました。
他の人がどう思おうと、私は自分の身を私なりに守らなければいけません。

今は、どの駅でも私のお願いは聞き届けられるようになりました。
出来れば全体放送のシステムは考え直して欲しいなあと思っています。

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